漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

金木犀

 

この季節になるとふと気づけばあなたが馨ってくる

その甘い馨りに誰もが誘われ

あなたは何処かと求めてしまう

慎ましいあなたに一目見えんと求め彷徨う

それなのに

いざあなたと一度見えて仕舞えば

その馨りはいつの間にか消え失せる

あなたをもっと感じたかったのに

慎ましくも凛と立つあなた

こんなに近いのにあなたは何処か遠くへ行ってしまう

求めれば求めるほど

この嗅覚は惑わされ

あなたを感じることができなくなる

ああなんと人の鈍さの恨めしいことか

そう、でも

それがあなたの生きかたなのでしょ

遠くからみんなを優しく包んでくれる

姿を見せず馨りを魅せて作用する

悲しいね

あなたの橙色の小さき花を愛でる人はいるのでしょうか

慎ましく愛らしい花を

あなたは美しい