漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

好意

私たちは幸せだ 皆に真っ当と言われるものを好けるので だから真っ当でいられるのです 不幸ではないでしょう 真っ当ではないものを好いたとしても 密かに想うていれば構わない けれどどうしようもなく求めて仕舞えば 自身が脅かされる だって真っ当ではない…

決意

きっと私はやめないでしょう 誇りを持ちましたので 日本の文化 唯一の文化 永年の努力の証 讃えないのは勿体無い それ故に 私は恥ずかしい 自信もって名乗れない このままでは 全然だめだ だから 私はやめない 誇りをもって名乗れるまでは こんなこと言って…

ご教授

確かにあなたの言う通りです 私は甘えていました 顔色やタイミングなど言い訳 一緒に決めたかったと言いつつ 決断は人任せ ただ何も考えず待ってただけ 一体いつから思っていたのでしょうか よく見ていますね私のことを 私の悪いところをずばりと言い当てま…

共犯者

男の自殺者の方が女の自殺者より多いのだそうですね 当たり前のことを言わないで下さいますか これまで男が為してきたことを忘れた訳ではないでしょう 女に対するこの仕打ちを 世界を壊す戦争を起こした事を それ故に今その罰を受けているのではないのですか…

赤道

一度見失ったものを取り返すには 途方もない時間と努力が必要 遠い遠い原始 ただ生命を維持するために働く時代 多分化せずごくシンプルな精神 世界をただしく畏怖する それ故に驕らず支え合う 益を理解し素に尊重する 男も女も関係ない 男と女 やはりそこに…

ジグソーパズル

この世はジグソーパズル 到底完成し得ないジグソーパズル ひとつひとつ見出していけばすんなりはまる そして少しずつ繋がっていく 大きく塊になるものもあれば 小さく点々としているものもある やばて時が経てば知らずに繋がっていたりする 繋げたいと望めば…

塵箱

今まで考えてきたことが今の自分の人格を形成している。 だが考えていることなど刻一刻と変わりゆくもの。先程まで考えていたことなどすぐに忘れ去られる。 ふいに思い出すような大事だと思えるものもあれば、そのまま忘れ去られるような他愛の無いものもあ…

心-身

傍にいるとき、生理は重い。 今まで痛みなど感じことがないくらいだったのに。だるい。鈍い痛み。 身体が必要としている。 心よりも素直な身体。 子宮の収縮。感じる痛み。 生理が来なくなった。 痩せたから。 それだけじゃない。 会ってないから。 必要とさ…

性質

転んだ 膝を擦りむいた 痛い 涙が出る 誰のせい? 自分のせい 他の誰のせいでもない 自分で躓いた あの頃の記憶 ほぼないに等しい記憶 それなのに 今の私と変わらない 今私が何か不幸を被ったとして それは誰のせいでもない 誰かの何かが少し作用して 私の不…

中身

お部屋の中は心の中 好きなものも必要なものも要らないものも 嫌いなものも忘れたものもすべてある 今私が死んだなら 事故か事件か そうでなくても誰かはこの部屋に入ってくる 私の心の中へ そうして私のあれやこれやを 誰にも見せたくないものでさえ 無粋な…

夕暮に惑う

私の生家のトイレ。 そこはいつも夕暮である。 居間から納戸と硝子窓を隔てた長い廊下を通る。常に開け放しの木戸を越して右に見えるのは、片面が硝子窓で照らされた短い廊下、その突き当たり、そこがこの家のトイレだ。 如何にもといった女子と男子とがそれ…

ホームにて

両端から駆け寄る男女 抱きしめる寸前 女の方は横から入ってきた男に刺される 痛みはない、温かいものが下腹のあたりを流れていくのだけが感じられる 月経のとき、経血が陰部から流れ出ていくあの喪失感と似ている うかつだった 驚く恋人 刺されたのが私でよ…

執着

目を開けると、あなたがいた。 あなたは一瞬泣きそうな顔を見せてから私を強く抱き締めた。 なぜか右手がすごくじんじんする。 寝起きの頭でぼーっとしていたが、いつもと変わらないしあわせな時間で、静かにあなたのぬくもりを受け止めていた。 あなたのに…

生命線

電信柱が並んでいる 電線は繋がっている どこまでもどこまでも 繋がって電気を届けている 漏れながらも必死で届けている どこまでもどこまでも 人の住むところまで 決して洗練はされていない けれどその立ち姿は美しい 必要なものを 必要な分だけ 余計なもの…

日常

顔がかわる 私がかわる そうね 私はどんどんかわってる あの日の私はもういない 近づくこともあるけれど 同じ私はいない でも それはあなたにはわからない けれど あなたも少しずつかわっている それだけはわかる それでいい それが日常

創傷

誰も傷つかない世界に そんなもの糞食らえ 傷つけ傷つき 血を流しながら生きていく そうでしょう 傷つかない世界などつまらない 人生傷ついてなんぼ 忖度など洒落臭い ほらあなたもこちらへ来なさい 血濡れた手で楽しみましょう それでこそ真っ当よ

毒薬

愛 私たちは愛を欲している 私たちは愛を探している 私たちは愛を求めている 私たちは愛を与えている 私たちは愛を伝えている 私たちは愛を 私たちは 私たちは愛がなければ幸せではないのでしょうか 私たちは愛がなければ幸せにはなれないのでしょうか 私た…

塩の音

あなたの歌は美しい 世界を愛しているが故 喜びも悲しみもすべて受け入れ 儚くも気高く立ち尽くす あなたの歌声は言葉は 私の傷を優しく塩水に浸している 私はその声を聴きながら 静かに眼を閉じる そして身体中に沁みている痛みを 余すことなく感じる 何ひ…

大罪

私はいったいこの人生でどれほどの罪を犯してきただろうか 無神経な言葉 無知故の配慮のない言葉 未熟故の感情のままの言葉 思わず吐いて出た固定概念塗れの言葉 身を守るための嘘 熟考したが故の誤ち どれも意図して犯したものじゃない そんなつもりじゃな…

不機嫌

不機嫌なのね でも言わせてもらうわ あなたがどうしたいのか 私にどうしてほしいのか それを言わずに 伝える努力もしないで そんな不遜な態度とるなんて ただの怠慢よ 大人なんだから 人に機嫌を取らせないで 自分で取りなさい 私がいつまでも下手に出ると思…

生理のせい

私は不安である 漸くあなたとの生活が目前にある今 あなたのその態度が怖い 無視無言 私の言葉は素通り 聴こえているのに なかったことになる 何も言えなくなる 喉が詰まる 私が悪かったのでしょう 私がもたもたしているから あなたの適したときに適した動き…

夢を見た あなたの夢を 夢にみるのは初めてだった あんなに焦がれていたのに 初めてだった ふとあなたの声がして 振り返ったらあなたがいた いつもの通り 白い身体をしならせて 私に呼びかける 思わず撫でる 滑らかな毛並み いつもの通り どうしてと なぜい…

還る

細胞膜という境界を創った瞬間から 生物は孤独となった 境界があるから いや 生き物だけではないかもしれないね 無生物 化学物質 粒子 宇宙でさえも 境界という定義がある そうであるならば この世は生まれた瞬間から孤独である あの世で愛しいあの人に会え…

不要

可哀想なんて言葉は嫌い 私にその言葉を使わないで あなたの価値観を押しつけないで 私は不幸ではない 私は私の意思でこの道を選んでいる それをあなたの色目で否定しないで そんなこと到底できるわけないでしょう 少し考えればわかること 何か不快なことが…

大いなる者

人の想像力を超えて生きなさい 確かにそうだ 私は理解されたい訳ではない あなたには私を理解できないでしょう 私にもできません 人は理解のできないものを否定したがる 新しいことをして評価されるためには 人々の想像の範囲内で組み立てなければならない …

歯車

体の不調 というよりは 体の不具合 と言った方が正しいか 自律神経系 ホルモン動態 思えば薬を飲み始めた頃から 私の体は恒常的に働いてくれていたのに それを崩してしまった ひとつ歯車が狂ったら 他もどんどん狂っていく 精神でさえも それでも動かなくな…

学び

劣る 劣るとは? 老いること? 体は老いるが 精神は育っている 絶えず育っている 微かに朽ちてはいるが 太く確かに育っている 私は今がいい たとえあの頃の私より劣る部分があったとしても 今の私がいい 今を生きるために必要なものは今ちゃんと持ち合わせて…

支配者

嫌いなすべてを排除する そして清く正しい世界を そんなことを言う人がいる 彼らはきっと酷く傷つけられてきた 深く深く愛するものがあるから それが傷つけられることに耐えられない だから傷つけるものを排除する 己れが心地好く生きるために 少しはわかる…

精神と境

孤独はある 孤独からは逃れられない そこに境界があるから しかし精神は交差する そこに境界はない 肉体に付随するが肉体の境が精神の境ではない 言葉を介さずとも相手の気持ちがわかる 阿吽の呼吸 胸騒ぎ 虫の知らせ 傍割れ それらに距離は関係ない それら…

努力

世界は乖離する 本当にいいものとは その良さをわかる人はわずかである 大衆にはわからない そうして少し離れたところにある ありふれたものよりも称賛されるべきものは ほぼないものと同じ 人も同じ 本当の人格者とは 声を張らない ただ存在し求められれば…