漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

ホームにて

両端から駆け寄る男女

抱きしめる寸前

女の方は横から入ってきた男に刺される

痛みはない、温かいものが下腹のあたりを流れていくのだけが感じられる

月経のとき、経血が陰部から流れ出ていくあの喪失感と似ている

うかつだった

驚く恋人

刺されたのが私でよかった

あなたじゃなくてよかった

きっとこの男はあなたのことは知らない

だからきっと殺されない

嬉しさと安堵からあなたに微笑みかける

女の微笑みに困惑する男

最後にそんなあなたの顔が見られてよかった

この男が誰なのかなんで殺されるのかなんてどうだっていいでしょう?

それだけ私は幸せ

お別れ言わなきゃ

そんな気持ちは一瞬で消えた

お別れなんてどうだっていい

ただあなたの顔を見ながら死ねる

これ以上ない幸せ

それだけでいい

薄情な女でごめんなさい

 


「愛してる」