漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

女のいない男

 

私とあなた

どっちが先にこの世からいなくなるのかな

「女のいない男たち」

あれはとてもいい本だった

男というものを少し分かった気がする

あなたは読んだかしら

あの人の描く女性たちはとても魅力的

あの人を敬愛するあなたは私の中に少しでもそんな魅力を見出したのでしょうか

それはわからない

教えてくれなきゃわからない

それでもあなたは私を選んでくれた

私は彼女たちのようにあなたに与えているでしょうか

わからないけれど

私はあなたを愛している

私はあなたのことを簡単に置いて去きはしないでしょう

むしろ立場は逆でしょう

もしその時が訪れるならば

私の死以外他ならないでしょう

今はなんとなくだけれど私は死ぬなら乳がんやら子宮がんによると感じている

わからないけれど

そのときあなたはどうするかしら

私のことを案じているのはわかっている

だって嬉しくてしょうがないんだもの

あなたが女のいない男になったとき

あなたはどうする?

私を追いかける?

ただただ心に留めて置く?

それとも他の女に縋る?

それはあなたの自由

私にはあなたの人生をどうこうする力はない

そんな気もない

ただただあなたの人生を生きてほしい

ただそれだけ

あなたには私がいなくても自身の人生を歩む力があるでしょう

だから私は傍に居られたの

そんな人そうそういないもの

私を失ったら

存分に苦しんで

苦しんで苦しんで苦しんで

欠けた部分を抱きしめて

そうしてできたあなた自身を愛してほしい

それだけが私の願い

もう私はどこにもいない

風になんてならない

どこにも眠ってなんかいない

電気信号は途絶え

肉体は灰になり

精神は解かれ

ただ漂っている

偶には私の一部を感じるかもしれない

花に鳥に風に月に

そして見知らぬ誰かに

もちろんあなたのどこかにも

 

あなたは欠けている

だからこそ美しい

もしそんなあなたが見れたなら

私は

 

あなたは生きて

ちゃんと生きるんだよ