漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

最高峰

 

 

ビルケナウ

複製画の前に惑わされ

黒い鏡の前に立ちすくみ

本物の前に喉が詰まる

そして塗り潰された写真の前に涙する

どうして?

どうしてこんな絵が描けるの

暖かな雪解けが壊される

叫び声が聴こえる

血が流れる

そうして混沌の中へと誘われる

怒りでもない

悲しみと苦しみと少しの自責の念

だからこそなのか

体に染み渡ってくる

私は傍観者だ

本当のことは知らない

けど少しはわかる

涙を堪えてその場を離れることしかできなかった

でもこれは私にとって最高の体験だった

一生ものの体験

見るべきだった

日本人として

戦争画

藤田嗣治

あんなにも輝かしく描けてしまうのか

時代なのはわかっている

私は傍観者

 

 

ライティングたち

それらはきっと風景画

荒々しくも静かな自然の中に引き込まれる

畏怖の念に苛まれる

美しい

美しくて堪らない

世界を愛している

人の営みも当然のように

何かが含まれている

地図と山並みと風景と幾何学と星と地形と惑星と家と星あかりと飛行機

直線と時間

今の私はなんなのか

そう問われてさらに足取りは覚束無い

 

抽象画と風景画

そして写真

モネの名前ではっとした

そういうことなのね

少しわかった気がするよ

さらにあなたは一体何を成そうというの

重なって重なって

人の営みと

自然の脅威と

重なりながら

意図からも遠く離れて

それは出来上がるのね

自然の営みへと昇華する

言い換えれば人の脅威へと

もう一度

どこかで会えるなら

またお話ししましょう

どんな私になっているかはわからないけれど

また違うものが見えるかも