漂う手紙

生活と思想。遺書とラブレター。時に真似事。

感じる

 

感覚過敏

食感過敏

私は果物が嫌い

野菜が嫌いだった

味じゃない

味などは紛れて仕舞えばこっちのものだ

違うんだ

食感が嫌なんだ

歯で噛むと鳥肌が駆け

舌で触ると吐き気が襲う

本当に食べものかこれは

そんな気がした

周りを見れば皆美味しそうに食べている

こんなに不快なものを

わからない

こんなに美味しいのにどうして?

わからないよ

私にもわからない

ただただ嫌なんだ

ただただ不快

臭いも形も触るのも

そこにあるのも嫌だった

皆が食べているのもなんだか嫌だった

少し離れたところで待っていた

あのときのことは忘れない

全部食べなさいと

それまで遊んじゃだめだと

ひとりで泣きながら座っていた

いつまでもいつまでも

地獄だった

あれはトラウマだったんだ

私の脳裏からは離れない

母は理解はしないけれども強要はしなかった

別のものを出してくれた

野菜にしてもそう

好きなものを好きなだけ

そんな食卓でよかった

心地よく食べられた

火が通れば食べられる

味はなんとかなるもの

それに気がつけた

父は少し面倒くさいけれどやっぱり強要はしなかった

今思えば本当によかったと思う

いい両親だと思う

あんたの弁当はいつも茶色い

スペースちょうどいいから入れちゃった

ほら私の好きなやつ

え?食べないの?

悪意のない悪戯

ただ受け入れてくれた

それでよかった

彼らがあまりに美味しそうに食べるものだから

私も食べられるようになりたいと思った

彼らの好きなものを好きになりたいと思った

もちろん自分の為に

身体は受け付けないけれど否定がしたい訳じゃなかった

今ではそれらを少し愛でているくらい

そう思えたのはあなたたちのおかげ

野菜は美味しいと思えたよ

些細なきっかけ

一緒にいたらわからなかったけれど

離れたらよくわかった

どれほど有難いことなのかを

野菜は好きになれたけれど

果物はまだだめかな

前よりはいいよ

一応食べられるくらいにはなったもの

鳥肌も吐き気もほとんどない

でも美味しいとは思えない

それでも

とんでもない進歩だろうと思う

初めの頃を思えば

本当に

がんばってきたね

つらかったね

後ろめたさを感じる必要なんてなかったのにね

でも少しはあるかも

それでも

これは私の人生において大事なこと

一大発見でしょう

涙が出てきちゃうね

でもよかった

気づけてよかった

私は違う

感覚が違う

少し特別かもしれない

逆を言えばとっても敏感

人よりたくさんのものを感じられる

例えばあなたの肌を

先天的でも後天的でもあるけれど

あなたを愛撫したら私も感じる

気持ち良くなれる

それって素敵よね

いっぱいしてあげる

だって私も気持ちいい

なんだかどうでもよくなってきた

感じたい

感じさせて

この舌で

あなたの全部

もっと

もっと